「クィーン」

シャクヤク

ヘレン・ミレンは凄い。
最初に映った時から、もうエリザベス女王にしか見えなかった。
頭からつま先までクィーン。
「コックと泥棒、その妻と愛人」ではセクシーでクールな妻、
第一容疑者」では男たちを率いる、悩めるボス。
地に足がついた演技で現実感がある。
でもエリザベス女王を演じるなんて、さすがの彼女でも緊張するのは納得。


脚本はできる限りの調査の上で作られているらしいが、
かなり突っ込んだところまで描かれているので、
初めは見ている方がハラハラしてしまう。
大きく見ると、ダイアナの死後は王室vs世間に分かれたようではあるけど、
肝心の女王は母親を亡くした孫たちの祖母として彼らを気遣い、
それでいて感情を表には出せない立場を守り続け、
その狭間で感情を持て余している。
家族の中でも口に出せない思いを、
一人で出かけて大鹿に出会った時にようやく表に出す。
後ろ姿なのに、とてもとても感情が伝わってくるシーンだった。
…だけど、そうだとしても、こんなプライベートなシーンを作ってしまうのが
この映画の凄いところ。


トニー・ブレアのことはあまりよく知らないけど、
良すぎるくらいに話の分かるキャラクターとして描かれている。
あまりトップの人間って感じはしないけど…。
ブレア夫人があまりに物事の見えないバカ女なのが笑っちゃう。
革新という言葉で伝統を軽んじる考えはどうかと思う。
伝統を守っていくのと固執するのとは違うんじゃないかな。
守りつつも、その時どきに合わせた変化は起こるものだと
思うんだけどなあ。


ストーリーもおもしろいのだけど、セットや設定、衣装も細部まで
丁寧に作られているところもこの映画の注目点。
ベッドで眠るロイヤルファミリーなんて、
このような形で見ちゃっていいのかなって思ってしまうくらい。
自ら車を運転して出かけちゃう女王とか、
バルモラルではかなり自由に過ごしているのだねー。
本物じゃないけど、本物として見てしまう。
そして何より、女王のコーギーちゃん達の可愛さはたまりません!
その昔、女王のペットのコーギーを見て、
いつかこのわんこと暮らしたい!と思った私としては、
コーギー特有のアホ面しながら女王のそばを
たららら〜んとついてまわる姿を見るだけで大満足☆
コーギー飼いは必見です!
女王のコーギーなのに、女王やブレアに体当たりしてるのも笑えます。

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