「ナツコ 沖縄密貿易の女王」

いやあ、無知でした。
太平洋戦争中の沖縄での激戦はよく聞くけれど、
戦後の一般市民の生活ぶりは今まで聞いたことがなかった。
ある意味、沖縄は本土からは放置状態で、
いかに物資が不足していたか。
その中から密貿易という形で人々が生きるための行動を起こす。
その時代を生きた人々の間で伝説となっている「夏子」の
短い生涯を著したのがこの本。
ほとんど記録の残っていない「夏子」を捜し求めて
年月をかけて調べ上げた著者もまた一つの物語であり、
当時の沖縄市民がどのような生活をしていたかを知るにも
もってこいの本なのです。
生き証人がどんどん少なくなっていく今、
夏子という女性を世に出した唯一無二の本。
著者の取材力にはアッパレです。


夏子の商売に関する先見の明には敬服。
娘たちへの接し方は少々不器用にも思えるけど、
海の男たちを使いこなすその手腕など、
もっと長生きしていればきっと誰もが知る商売人になってたんじゃないかな。
物語を読むようにワクワクしたが、
娘さんから見た母親としての夏子だけがやけにリアルに感じる。