誠心誠意、嘘をつく
「誠心誠意、嘘をつく 自民党を生んだ男・三木武吉の生涯」
水木楊著
三木武吉のことは全然知らないまま読み始めたが、
物語のような内容と読みやすい文章で、
あっという間にのめりこんだ。
最初から最後まで事がうまく運んだわけではなく、
金銭的にも苦労しながら政治の道へ進んだ人物。
何度も倒れながらしがみつき、最後に大仕事をやりとげたのが
なんともドラマチック。
政治の世界は今も昔も権力と金にしがみつく人間が
あふれていることを知らされるけれど、
昔の方が社会全体が政治に関して真剣だったように思う。
文中に出てくる様々な立場の人間の多くに
筋の通った気質を感じる。
例えば保守合同の際の、記事にすれば世紀の大スクープとなったであろう
できごとにパイプ役として関わった新聞記者たちは、
それについて一切書くことはなかったらしい。
彼ら無しには事が進まなかっただろうし、
少しでも話が漏れても計画は頓挫したはず。
私利私欲にとらわれず、信念をもって行動するカッコよさが
感じられたエピソードの一つ。
三木はそんな政治家の筆頭として描かれており、
果たして現在の政治の世界にこれほど真剣に向き合ってる人が
どれほどいるのかと考えずにはいられない。
この本は三木の側から描かれているので、
吉田茂は敵役として偏って著されている気もするけど、
それぞれの人物像が特徴豊かなのでとても読みやすい。
勉強になりましたわ。